星状神経節ブロック

疲労や緊張、ストレスが続くと、肩こりや頭痛が出たり、ふだんより痛みを強く感じたりすることはありませんか。こうした症状の背景には自律神経のバランスの乱れが関与しています。緊張やストレスに晒されることで自律神経が過緊張になると、血行が低下し、痛みを感じやすい状態が続き、慢性的な痛みの原因になると考えられています。[1]
星状神経節ブロックは自律神経に直接働きかける治療です。首のつけ根にある「星状神経節」の近くへ少量の局所麻酔薬を注射して、自律神経の緊張状態を緩めることで効果を発揮します。自律神経の緊張状態が緩和すると、血行が改善し(たとえば手が温かくなるなど)[2]、痛みの感じ方も中枢機序の調整を介して適正化すると考えられています。[3]

当院では、超音波(エコー)で位置を確かめながら、なるべく痛みが少ないよう細い針で穿刺します。血管や神経を避けて狙った場所に薬を届けられるため、安全性と確実性の両方を高められます。[4]
首や肩に慢性的な痛みがある、習慣的な頭痛に悩まされている、睡眠の質があまり良くない、疲労やストレスによる体調不良が続いている方にはとてもお勧めの治療法になります。

星状神経節ブロックの作用と効果

星状神経節ブロックは、自律神経に働きかけて痛みをやわらげ、血流を改善する治療です。交感神経の緊張が強いと血管が収縮し、手足が冷たく感じたり、血流が落ちて痛みやしびれが長引くことがあります。星状神経節ブロックはこの緊張をゆるめ、血管をひろげて血流を高めることで[2]、血流低下に由来する痛みを軽減する作用が期待できます。
また、自律神経の過緊張は脳神経系の機能に作用し、痛みの感じやすさを増強(痛覚過敏)する作用があると考えられています。[3] 星状神経節ブロックはこうした脳神経系の機能異常を正常化することで、鎮痛効果を発揮する可能性があります。
このような仕組みにより、星状神経節ブロックはさまざまな痛みに対し有効な治療手段として用いられています。

星状神経節ブロックが有効な症状や疾患

星状神経節ブロックは、自律神経のバランスを整え痛みの改善をめざす治療です。とくに自律神経の緊張や血流不全が関与するタイプに適しており、肩こりや緊張型頭痛によく用いられます。
帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛(PHN)においても有効性が報告されており[5]、単回より複数回のブロックを行うことが推奨されています。[6]
このほか、耳鳴り・突発性難聴、頚椎症に伴う腕のしびれ、非定型顔面痛などでも選択肢となり、症状に応じて回数を調整しながら実施します。多くの方で、施行後に症状の軽減や体調の変化が期待できます。[7]
このように、星状神経節ブロックの適応疾患は多岐にわたり、ペインクリニックでも古くから重要な治療の一つとされています。

星状神経節ブロックが有効な疾患

エビデンスが確立している適応疾患

• 帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛(PHN)
• 頚椎症
• 頚肩腕症候群(肩こり)
• 突発性難聴
• 顔面神経麻痺
• バレ・リュー症候群(むちうち)
• 末梢循環障害(レイノー病、閉塞性動脈硬化症)
• 複合性局所疼痛症候群(CRPS)

臨床でよく行われる疾患

• 緊張型頭痛
• 片頭痛
• 非定型顔面痛
• 三叉神経痛
• 耳鳴り
• メニエール病
• めまい
• 冷え症
• 顔面紅潮
• 顎関節症関連痛
• 末梢神経障害性疼痛(手術後痛、外傷後痛)

状況に応じて行われる疾患

• 自律神経失調症
• 不安障害
• 更年期障害(ホットフラッシュなど)
• 喘息
• 皮膚潰瘍
• 難治性創傷
• 眼疾患(網膜血管閉塞)
• 睡眠障害

治療の流れと方法

星状神経節ブロックは外来で受けられる治療です。所要時間は数分程度と短く、痛みもさほどありません。1回の星状神経節ブロックで大きく改善する方もいますが、多くの場合は数回の治療を重ねることで徐々に症状が軽減していきます。

治療を受ける際の注意点と副作用

星状神経節ブロックは、超音波(エコー)で血管や神経を確認しながら行う限り、安全性の高い治療です。[4,8] 重い合併症は稀ですが、施行後に一時的な反応がみられることがあります。

施行後の一時的反応(多くは30〜60分で軽快)

• ホルネル徴候(施行側のまぶたが重い、瞳が小さい、目の違和感、目の充血)
• のどの違和感(声がかすれる、飲み込みにくい感じ)
• そのほか(鼻づまり、ふらつき)

稀に起こりうる合併症

• 感染(穿刺部の発赤・腫れ・発熱)
• 出血・血腫
• 血管損傷(エコーで主要血管を回避)
• 薬剤反応(局所麻酔薬の全身症状・アレルギーなど)

星状神経節ブロックがおすすめの方

• 首や肩・腕のしびれや痛み(頚肩腕症候群・頚椎症など)で、家事や仕事に支障を感じている方
• 帯状疱疹の後から続く強い痛みに悩まされ、眠れない・気持ちが落ち込むことがある方
• 顔や頭の神経の痛みで、食事や会話、日常生活が思うようにできない方
• 薬を飲んでもなかなか痛みが和らがず、毎日の生活がつらい方
• 手足の冷えが強く、冬だけでなく一年を通じて血行の悪さに困っている方
• 眠れない・耳鳴り・めまいなど、自律神経の不調で生活の質が下がっている方
• ストレスで自律神経のバランスが乱れ、心身ともに不調を感じている方

当院での星状神経節ブロック

星状神経節ブロックは、単に痛みを和らげるだけでなく、血流の改善や自律神経のバランスを整えることで生活の質を高めることを目指す治療です。
当院ではエコーを用いて血管や神経の走行を確認しながら丁寧に施行するため、合併症のリスクを抑え、安心して治療を受けていただけます。
また、星状神経節ブロックは幅広い症状に有効とされる一方、すべての方に適しているわけではありません。症例ごとに適切かどうかを判断するためには、専門的な診察が欠かせません。
以下のような場合は、ぜひ当院にご相談ください。
「薬を飲んでも良くならない」
「どこに相談したらいいかわからない」
そんな痛みや不調を抱えている方にとって、星状神経節ブロックは有力な選択肢のひとつとなり得ます。当院では、患者さんの不安をできるだけ取り除き、安心して治療を受けていただけるよう丁寧に説明し、十分に納得いただいたうえで施行しております。どうぞお気軽にご相談ください。