肩こり（頚肩腕症候群）とは

肩こりは、首から肩、背中にかけての痛みや重だるさを感じる状態の総称で、医学的には頚肩腕症候群と呼ばれます。主因は首や肩の筋肉のこわばりと、それに伴う血流の低下です。仕事やパソコン作業で首や肩が徐々に重くなって集中できない、朝起きたときから肩が張っている、首を動かすと肩甲骨付近に痛みが響く、といった症状が典型的です。[1] 症状が長引くと後頭部痛に発展し、緊張型頭痛を併発することもあります。[2] 当院では内服に加え、星状神経節ブロック、筋膜リリース、低出力レーザー治療（LLLT）などを組み合わせ、血流不全と過度な筋緊張という病態そのものに働きかけ、肩こりが起こりにくい状態を目指します。

このような症状がある方は受診をおすすめします

• 慢性的な肩こりが続いている
• 内服薬や湿布、マッサージで改善しない
• 頭痛や吐き気を伴う
• 腕や手にしびれや脱力感がある
• 痛みで仕事や家事、睡眠に支障がある

肩こりの原因と悪循環の仕組み

頚肩腕症候群のコアは、筋肉の過緊張と血流不全（微小循環の低下）です。長時間の同一姿勢やストレスにより筋が持続収縮すると、筋内圧が上昇し毛細血管が圧迫、酸素や栄養の供給が不足します。その結果、代謝産物が蓄積して痛み物質が増えます。[3] さらにストレスは自律神経を緊張させ、末梢血管の収縮を招きます。これにより「緊張→血流低下→痛み→さらに緊張」という悪循環が固定化します。[4]この循環を断ち切るためには、姿勢と運動による筋緊張の解消、星状神経節ブロックによる交感神経緊張の緩和、LLLTによる局所代謝と血流の改善が有効とされています。[9]

頚肩腕症候群を悪化させる日常要因

悪い姿勢や長時間の同一姿勢

姿勢維持のために首や肩の筋が持続収縮し、局所血流が阻害されます。酸素・栄養供給の低下と老廃物の蓄積により、虚血からこわばり、痛みへとつながります。慢性化すると短時間の姿勢保持でも症状が出やすくなります。[3]

ストレスや疲労

自律神経のバランスが乱れ、血管収縮と筋緊張が同時に起こり、症状を悪化させます。[4]

頚椎疾患（頚椎症など）

神経根の圧迫により、首や肩から上肢にかけての痛みやしびれが出現します。[5]

その他

眼精疲労、噛み合わせの問題、冷えなどによる末梢循環低下も関与します。

肩こりに隠れている病気（鑑別が必要なケース）

症状の部位と広がり、神経学的所見、増悪・緩解因子、心肺症状の有無などを総合して鑑別します。[5]

• 頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア（神経症状を伴うもの）
• 高血圧や眼精疲労に伴う頭頚部不快感
• 狭心症・冠動脈疾患、肺疾患などの関連痛

診察と検査の流れ

発症時期、悪化要因（PC作業など）、睡眠、頭痛の有無、既往歴などを丁寧に聴取します。身体診察では、痛みの部位、動作時痛、圧痛点（トリガーポイント）、可動域、神経学的所見を評価します。[6] 必要に応じて採血、心電図、画像検査を追加します。当院で行う注射はすべて超音波ガイド下で可視化し、安全性と精度を確保しています。

当院で行う治療

当院では「筋緊張をゆるめ、血流を戻す」方針で治療を行います。神経ブロックなどで、マッサージや理学療法では届きにくい痛みの発生源に直接アプローチします。

薬物療法（内服・外用）

NSAIDs、アセトアミノフェン、筋弛緩薬、外用鎮痛薬を症状に応じて選択します。[6]

星状神経節ブロック（SGB）

交感神経の過緊張を抑えて血流を改善し、筋肉のこわばりを和らげます。頭痛や自律神経症状を伴う方にも有効例が報告されています。当院では超音波ガイド下で安全に施行します。[7]

神経根ブロック

頚椎由来の痛みやしびれに対し、神経根周囲の炎症を鎮めます。[5]

トリガーポイントブロック／筋膜リリース

過敏化した筋硬結や筋膜の滑走不良に少量の局所麻酔薬を注入し、痛みのループを断ち切ります。[8]

低出力レーザー治療（LLLT）

細胞内ミトコンドリアに作用して代謝と血流を促進し、炎症や痛みを軽減します。[9] 神経ブロックや運動療法と併用し、効果の持続と再発予防を図ります。

運動療法（EIH：運動誘発性鎮痛）

適切な強度の運動により脳の痛み抑制系が働き、痛みの感じ方が一時的に軽減します。まずは下肢や体幹など痛みの少ない部位から始め、段階的に首・肩の運動へ移行します。[11] 運動で「動くと痛みが減る」体験を重ねることで不安が和らぎ、長期的な改善につながります。[12]

再発を防ぐための予防とセルフケア

姿勢の最適化

骨盤を立て、耳・肩・骨盤が一直線になるよう意識し、モニターの高さや椅子の位置を調整します。[3]

こまめなストレッチ

30分に一度は小休止をとり、肩甲骨の動きを意識したストレッチを2〜3分行います。

運動習慣

有酸素運動を20分程度、週2回は筋力トレーニングを追加。過度の負荷は避け、段階的に継続します。[12]

ストレスと睡眠

ストレスや睡眠不足は自律神経を乱し、血流低下を招きます。生活習慣の見直しが大切です。[4]

なぜペインクリニックが選ばれるのか

ペインクリニックは医学的エビデンスに基づいた治療を提供し、神経ブロックやLLLTなど専門性の高い選択肢を用意しています。診断から治療、再発予防まで一貫してサポートできる点が強みです。[5] 長引く肩こりや首こりでお困りの方は、ぜひご相談ください。