2025年12月23日


「最近、首を動かすと腕や指、肩甲骨の周りが痛くなる」
「腕や指先がピリピリとしびれる」
「肩甲骨の内側に嫌な痛みがある」
このような症状がある方は「頚椎症」の可能性があります。
頚椎症と聞くと、なんとなく「首が悪いのかな?」とは分かっても、具体的にどうなっているのかイメージしづらいですよね。
今回は、この「頚椎症」がなぜ起きるのか、そしてどんな症状が出るのかについて解説していきます。
そもそも、首の中で何が起きているの?
人間の頭の重さは、だいたい約4kg〜5kg。ボウリングの球くらいの重さがあるとも言われています。
首の骨(頚椎)は、毎日この重さを支えながら、上下左右に動いています。そのため、頚椎には常に大きな負担がかかっており、加齢とともにさまざまな変化が生じます。
主な変化として
①椎間板の変性
脊椎の骨と骨の間には、クッションの役割を果たす「椎間板」があります。年齢とともに椎間板の水分が減り、弾力が失われ、徐々に潰れていきます。
②骨や靭帯の変形
骨の変形や靭帯の肥厚が進行すると、神経の通り道が狭くなります。
こうした変化によって頚椎の神経が通る空間が狭くなると、神経に圧迫や炎症が生じやすくなり、頚椎症を引き起こします。[1]
脊髄か神経根かで症状がちがう
頚椎症には大きく分けて2つのタイプがあります。
脊髄の本幹が圧迫される「脊髄症」と、脊髄から分岐する神経の枝が圧迫される「神経根症」で、それぞれ症状や特徴が異なります。
①脊髄症
脳と全身をつなぐ神経の本幹である脊髄が圧迫されるタイプです。両側の手足のしびれ、手先の不器用さ、歩きにくさなどがみられ、痛みよりも動作のしづらさが目立ちやすいのが特徴です。[2]
②神経根症
脊髄から枝分かれして、腕や手へ向かう神経が圧迫されるタイプです。片側の首から肩、肩甲骨周囲、腕、指先にかけて、ビリビリ・ジンジンとした痛みやしびれが出ます。上を向くなど特定の姿勢で症状が強まることが多く、動きの悪さより痛みが前面に出やすいのが特徴です。適切な治療により改善が期待できる場合が多いタイプです。[1]
スマホの使いすぎにも要注意
頚椎症の主な原因は加齢ですが、最近は若い方でも症状を訴えるケースが増えています。
うつむいた姿勢でスマートフォンを長時間使用するなど、首に負担がかかる姿勢が続くと、首周囲の筋肉や関節にストレスがかかり、痛みや違和感を生じやすくなります。日常の姿勢も、症状に影響する要因の一つと考えられています。[3]
どんな治療があるの?
頚椎症の治療は、症状のタイプや強さ、日常生活への影響に応じて選択します。多くの場合、体への負担が少ない方法から始め、経過を見ながら調整していきます。
内服治療や姿勢・生活習慣の見直しを行っても痛みやしびれが強い場合には、神経ブロックなどの治療を検討することがあります。
特に神経根症では、エコーガイド下の頚椎神経根ブロックが選択肢の一つになります。超音波で血管や周囲組織を確認しながら、局所麻酔薬や抗炎症薬を神経根の近くに投与し、痛みやしびれの早期軽減を目指します。[4]
症状を繰り返す場合には、高周波パルス療法を組み合わせ、より長い期間の症状軽減を目指すこともあります。[5]
参考文献(登場順)
1. Theodore N. Degenerative Cervical Spondylosis. N Engl J Med. 2020;383(2):159-168.
2. Davies BM, Mowforth OD, Smith EK, Kotter MRN. Degenerative cervical myelopathy. BMJ. 2018;360:k186.
3. Chen YJ, et al. Association of smartphone overuse and neck pain: a systematic review and meta-analysis. Postgrad Med J. 2025;101:620–626.
4. Narouze SN, Vydyanathan A, Kapural L, et al. Ultrasound-guided cervical selective nerve root block: a fluoroscopy-controlled feasibility study. Reg Anesth Pain Med. 2009;34(4):343-348.
5. Wang F, et al. Pulsed radiofrequency with or without selective nerve root block for cervical radicular pain: a randomized comparative study. Pain Pract. 2017;17(5):589-596.
