頚椎神経根ブロック
頚椎神経根ブロック

頚椎神経根ブロックは、首(頚椎)から肩や腕へ伸びる神経の根元付近に、少量の局所麻酔薬や抗炎症薬を注射して、神経の炎症と過敏化をしずめる治療です。[1] 対象となるのは、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎の帯状疱疹後の痛みなどで、内服やリハビリだけでは十分に改善しない強い痛みやしびれがある方です。
当院では超音波(エコー)を用いて血管と神経の位置をリアルタイムに確認しながら、神経根の近くへ少量の薬液を注射します。外来で数分〜10分ほどで終わる負担の少ないブロック注射で、神経の炎症と過敏状態を落ち着かせることで、速やかに痛みを和らげることができます。[2]
頚椎神経根ブロックは、首の神経痛に対して効果が期待できる治療です。首を動かすと腕や手にひびくような痛みやしびれが走る、肩や肩甲骨まわりの強い痛みが続く、といった症状がある方が対象になります。
頚椎症は、程度によってはお薬やリハビリだけでは十分に改善しないことがあります。首・肩・腕・指の痛みやしびれが長く続く、夜間の痛みで眠れない、仕事や家事に支障が出ている――このようなお悩みがある方は一度ご相談ください。手術はできれば避けたい方、または手術後も痛み・しびれが残ってつらい方にとっても、治療の選択肢となります。
対象となる主な病気には、飛び出した椎間板が神経を圧迫して痛みやしびれを起こす「頚椎椎間板ヘルニア」、年齢や負担による骨・靭帯の変化で神経が圧迫される「頚椎症性神経根症(椎間孔狭窄など)」があります。さらに、首の帯状疱疹(頚部帯状疱疹)や、その後に残る神経の痛み(帯状疱疹後神経痛)にも行うことがあります。むち打ちなどのけがのあとに残った神経痛、手術後に続く慢性的な首・腕の痛みに対しても有効な場合があります。
これらの症状や病気で日常生活に支障が出ている方に、おすすめできる治療です。
この治療では、痛みの原因となっている神経根のそばに、少量の局所麻酔薬と抗炎症薬(少量のステロイド)を注射します。投与された局所麻酔薬と抗炎症薬が神経根に作用することでつらい痛みやしびれを軽減することができます。
局所麻酔薬は痛みの信号を一時的に遮断し、過敏になっていた神経をいったんクールダウンさせます。[3] 抗炎症薬は神経や周囲組織の炎症やむくみを抑え、神経炎症由来の痛みを鎮め、神経への圧迫を軽減します。[4] 抗炎症作用は十分に現れるまで2〜3日かかることがあり、比較的長く効くのが特徴です。
効果の強さや持続時間には個人差があり、1回で大きく改善する方もいれば、1〜2週間おきに数回重ねて段階的に良くなる方もいます。効果はあるものの再燃しやすい場合には、高周波パルス療法(PRF)を組み合わせ、より長期的な鎮痛を目指すこともあります。[5,6]
頚椎神経根ブロックは入院ではなく外来で行える注射治療です。かかる時間は10分程度で、入院は不要です。超音波装置(エコー)を用いて、合併症を起こさないよう慎重に施行していきます。
症状や画像検査から痛みの原因となっている神経を確認します。ブロックの詳細についてイラスト等を用いて手技の流れや効果、起こり得る合併症まで丁寧に説明します。ご不安やご不明点が残る場合は、この時点で施行を見合わせることも可能です。
痛い側を上にした横向きで体位をとり、エコーで神経や血管の位置を確認します。首の後方から頚椎の神経根に向けて針を進め、局所麻酔薬と抗炎症薬を注入します。施行直後から鎮痛効果が現れることが多く、即効性が期待できます。
注射後は約5分間安静にし、ブロックの効果や副作用を観察します。投与した局所麻酔の影響で、ブロック側の腕にしびれや力が入りにくい感覚が出ることがあります。複数の神経根ブロックを同時に行った場合、腕が一時的に動かしにくくなることもありますが、通常は1時間程度で回復します。鎮痛効果や脱力の程度を確認し、体調に問題がなければ帰宅可能です。特別な行動制限はありませんが、施行後1時間ほどは感覚や筋力が低下しやすいため注意してお過ごしください。感染リスクは極めて低いものの、当日夜は念のためシャワー浴を推奨しています。
1回の治療で大きく改善する方もいれば、数回の施行で徐々に痛みが軽減する方もいます。効果の出方は、元々の痛みの強さや神経の圧迫の程度などに左右されます。一般的には1〜2週間ごとに数回行い、経過を見ながら回数を調整します。繰り返すことで神経の炎症が落ち着き、痛みやしびれが再発しにくくなることも期待できます。神経圧迫が強い場合や神経周辺の炎症が強い場合、治療後に効果を実感しにくいケースもあります。
頚椎神経根ブロックは安全性の高い治療ですが、首の神経の近くに注射を行う性質上、いくつかの副作用やリスクが起こる可能性があります。注射部位の痛みやしびれ、頭痛、一過性の神経症状(腕の脱力や感覚低下)、過敏反応、迷走神経反射などは一時的なもので、多くは1時間前後で自然に改善します。まれな合併症として、血管損傷や血管内注入(椎骨動脈など周囲血管の穿刺に伴い、めまい・耳鳴り・意識低下・けいれん・血腫形成などが生じ得ます)、くも膜下腔内注入(強い麻酔状態となり、状況に応じて呼吸・循環管理が必要)、神経損傷(電撃様の強い痛み)などが挙げられます。当院では超音波ガイドを用いて血管走行を確認しながら穿刺を行うことで、血管穿刺の回避に努めています。[1] また万が一合併症が生じた場合にも速やかに対応できる体制と設備を整えています。
頚椎神経根ブロックは神経の炎症や過敏になった状態に直接アプローチする治療であるため、有効性が高く、即効性も期待できる治療法です。長らく悩まされてきた症状が、ブロック直後から楽になる方も少なくありません。
当院では、経験豊富な医師がエコー(超音波)で神経や血管の位置を確認しながら、精度の高い頚椎神経根ブロックを行っています。「首の痛みやしびれで日常生活がつらい」「薬を飲んでも良くならない」「手術は避けたい」──そう感じている方は、どうぞ一度ご相談ください。[7]
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