頚椎症による痛み
頚椎症による痛み

頚椎症は、首の骨(頚椎)や椎間板、関節が加齢や生活習慣の影響で変化し、首や肩の痛みや手足のしびれを引き起こす病気です。[1]
首は七つの頚椎とその間の椎間板、周囲の靱帯・関節が連動して重い頭を支えていますが、加齢や長期間の不良姿勢で椎間板の弾力が失われて高さが下がり、骨の縁に骨棘ができ、靱帯が厚く硬くなると、神経や脊髄の通り道が狭くなります。その結果、神経の圧迫や周囲の炎症が生じ、首や肩の痛み、肩甲骨まわりの強い痛み、腕や指のしびれ・力の入りにくさが現れます。[1]
頚椎の変化は四十代以降で増えますが、ストレートネック傾向やスマートフォン・パソコンの長時間使用などの影響で、若い方にも見られるようになっています。[1]
首を動かしたときに、首や肩甲骨周辺から腕や指へ電気が走るような痛みやしびれが再現されるなら、頚椎症の可能性が高いと言えます。[2]
首や肩のこり・痛みに加え、首を動かしたときに肩甲骨まわりや腕にズキズキと深く響く痛みが出ることが特徴です。進行すると腕のしびれや力の入りにくさ、指先の細かな動きのしづらさが目立ち、夜間に眠れないほど強くなる場合もあります。[1]
症状は障害を受けた神経の領域に現れるため、痛みやしびれの場所は原因となる神経を推測する手がかりになります。たとえば第5頚神経(C5)は肩から上腕外側、第6頚神経(C6)は前腕外側から親指、第7頚神経(C7)は手の甲から中指、第8頚神経(C8)は小指側から薬指にかけて症状が出やすい領域です。[3] 見上げる・振り向く・同じ姿勢を長く続けると悪化し、休憩や姿勢を整えると和らぐことがあります。なお、足の突っ張りやふらつきや手の動かしにくさが急に悪化したり、排尿や排便に時間がかかるようになったりした場合は脊髄の関与が疑われますので、早めの受診をおすすめします。[4]
頚椎症にはさまざまな要因が関わりますが、中心は「神経の圧迫」と「炎症」です。[1]
年齢とともに椎間板が変性したり、骨の縁にできる出っ張り(骨棘)が形成・増大したり、脊椎周囲の靱帯が肥厚したりします。こうした組織の変性により、頚椎で神経が通る道が狭くなり、神経が圧迫されやすくなります。また、椎間板ヘルニアを起こした場合には、突出した椎間板によって神経が圧迫され、痛みやしびれの原因となることがあります。
椎間板や周囲の組織に負荷がかかり続けると、神経やその周辺に炎症が起こり、神経が過敏になって痛みやしびれを感じやすくなります。
これらの要素は動作・姿勢で悪化する事があり、次のような動作は症状を悪化させることがあります。
姿勢や動作による痛みは、作業環境の調整やこまめな休憩などで予防・改善できることがありますが、症状が強い場合や仕事などで痛みが誘発される場合は我慢せず早めにご相談ください。[3]
頚椎症は神経の圧迫や炎症によってしびれや脱力などの神経症状が出る病気です。これに対し肩こり(頚肩腕症候群)は、血流低下と筋肉・筋膜のこわばりが主な原因で、首や肩の張りや重だるさ、鈍い痛みが中心という点で異なります。[1]
手指や腕のしびれ・筋力低下がある、見上げる・振り向く動作で肩から腕に「電気が走る」ような痛みが出る。
首から肩にかけて広い範囲のコリや重さが中心で、温める・休憩する・姿勢を整えると軽くなりやすい。
当院では肩こり(頚肩腕症候群)に対し、筋緊張や血流低下の改善を目的に星状神経節ブロックや理学療法を中心とした治療を行っています。
首や肩のこりが続くだけでなく、腕や手指のしびれ、細かい作業のしづらさ、肩甲骨周囲の強い痛みがある場合は早めの受診を検討してください。さらに、歩行時に足が突っ張る、つまずきが増える、排尿が不安定になるなどの症状がある場合は、脊髄への影響が進んでいる可能性があり、放置は禁物です。[4]
頚椎症の診察では、いつから症状が始まり、どの動作で悪化し、どの姿勢なら楽になるのかを丁寧にうかがい、首や腕の可動域・筋力・感覚・腱反射を確認します。Spurling test(スパーリングテスト)やJackson test(ジャクソンテスト)といった神経圧迫の有無をみる検査では、頭を傾けたり軽い圧を加えたりして、日常で感じる肩から腕への痛みやしびれが再現されるかを安全に確かめます。[2]
画像検査はMRIを中心に行い、神経や脊髄、椎間板、靱帯など軟部組織の状態を詳しく評価し、どの高さで神経が圧迫されているか、脊髄の圧迫やむくみの有無を確認します。なお、画像の見え方と症状の強さは必ずしも一致しないため、検査結果だけに頼らず、問診や診察所見を合わせた総合判断を大切にしています。[5]
当院では即効性のある疼痛緩和を第一の目標に、頚椎症の治療を行っております。治療には薬物療法と神経ブロック療法を中心に、必要に応じて高周波パルス療法(PRF)・低出力レーザー治療(LLLT)・理学療法を組み合わせて行っています。[3]
薬物療法では、神経の炎症を抑える消炎鎮痛薬、神経の過敏を落ち着かせる神経障害性疼痛治療薬、筋緊張を和らげる薬や漢方薬を用います。併発しやすい肩こりには、湿布や塗り薬も併用します。[3]
神経ブロックでは、神経根ブロックもしくは星状神経節ブロックを行います。神経根ブロックは、頚椎神経の根元である神経根に直接アプローチする方法です。即効性と高い改善率が期待できますが、神経の走行には個人差があり、近くに血管も多く、穿刺による合併症のリスクがあります。また、痛みの原因となる神経の同定が難しい場合もあり、熟練した専門医でないと効果的なブロックが困難なことがあります。当院では、超音波(エコー)で血管や周囲組織を確認しながら、短時間で安全に実施できるよう努めております。[6] 星状神経節ブロックは、交感神経の緊張をやわらげ、血流の改善と神経の過敏性の軽減が期待できます。いずれのブロックも、反応を見ながら数回行うことで、効果の安定化が見込めます。
高周波パルス療法(PRF)は、電場刺激で神経の興奮性を抑え、長期的な症状軽減を目指す方法です。ブロックの効果が短時間にとどまる場合や再燃を繰り返す方に有効な選択肢で、こちらもエコーガイド下で、神経近くに針を穿刺して実施します。[7]
低出力レーザー治療(LLLT)は、レーザー光で照射部位の炎症を抑え、血流の改善を図る治療法で、他の治療と組み合わせることで相乗効果が期待できます。[8]
ストレッチや姿勢の改善など、理学療法もあわせて行います。
薬やブロックで改善しない場合、また歩行障害や手指の細かい動作の障害、排尿異常といった脊髄の症状が進んでいる場合には、外科的に圧迫を解除する手術が必要になることがあります。当院では必要に応じて整形外科や脳神経外科と連携し、適切な専門治療につなげています。[4]
長時間の同じ姿勢を避け、スマートフォンやパソコンは目の高さに調整しましょう。枕は首の自然なカーブを保てる高さを選び、合わない場合は少しずつ調整することが大切です。こまめに体勢を変え、肩甲骨や胸まわりを動かす体操を取り入れると、再発や悪化の予防につながります。[3]
当院では、薬物療法だけでなく神経ブロックや高周波パルス療法(PRF)、低出力レーザー治療(LLLT)、理学療法を組み合わせた治療を行っています。頚椎症でお困りの方は早めに当院へご相談ください。
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