星状神経節ブロックとは?   ―自律神経に働きかける治療法

◆ なぜ痛みが“慢性化”するのか?

肩こりや腰痛、筋肉痛などの痛みが長期間持続し、「慢性痛」へと変化することがあります。

様々な研究によって、自律神経の過剰な興奮がなかなか改善しない「慢性痛」の成立に関連している事がわかっています。

自律神経と「慢性痛」の関連

痛み刺激 → 交感神経が興奮 → 血管収縮 → 局所の血流が低下 → 酸素不足・代謝障害
→ 神経の過敏化 → 持続的な痛み = 「慢性痛」の固定化・難治化

このように、痛みと交感神経が互いに悪影響を与えることで、“治りにくい痛み”が固定されてしまうのです。

◆ 星状神経節ブロックとは? ―“痛みの回路”を断ち切る鍵

この悪循環を断ち切るために用いられるのが、「星状神経節ブロック(SGB)」です。

星状神経節は、首の付け根に位置する自律神経の中継点で、顔・首・腕・心臓などに分布する交感神経線維のセンター的な役割を果たしています。

星状神経節ブロックは交感神経の過活動を一時的に遮断し、痛みの回路や交感神経のアンバランスをリセットします。星状神経節ブロックに期待される効果としては、①末梢血流の改善、②痛み信号の減弱 、③自律神経バランスの改善などがあります。

◆ 対応する痛みの種類と疾患

星状神経節ブロックは、痛みをただ“感じにくくする”のではなく、「痛みをつくる仕組み」そのものに作用する治療法です。

次のような痛みに有効とされています:

- CRPS(複合性局所疼痛症候群)、帯状疱疹後神経痛(PHN)の慢性化を予防、顔面痛、三叉神経痛、頚部神経痛、神経障害性疼痛、冷え性、レイノー病、片頭痛、緊張型頭痛、肩こりに伴う関連痛

◆ 星状神経節ブロックの施術方法

当院では、超音波(エコー)ガイドを用いた星状神経節ブロックを行っています。リアルタイムで血管・神経の位置を確認できるため、安全かつ正確な施術が可能です。

◎ 手順の概要:

  1. 横向きに寝て、首を少し反らせます。
  2. 首にエコーを当て、首の側方から針を刺入。
  3. 星状神経節周囲に局所麻酔薬を注入し、薬液の拡がりを確認します。

◆ 施術後の反応と注意点

施術後に以下のような変化が見られることがあります:

- 眼瞼下垂・縮瞳・顔面の発汗減少(“ホルネル症候群”と呼ばれます)

→ ブロックが効いているサイン。1時間程度で自然回復します。

- 嗄声(声がれ)・嚥下しづらさ

→ 喉周囲の神経への一時的な作用。多くは1時間以内に解消します。

- 穿刺部位の軽い痛みや違和感  → 1~2日以内に消失。

◆ “神経の再起動” ―SGBがもたらす全身への影響

SGBは、ただ痛みを和らげるだけでなく、交感神経の過活動を抑えることで全身の自律神経バランスをリセットするような感覚をもたらします。

SGBを受けた際の感覚としては以下のようなものがあります。

- 「身体が温まり、手足のしびれが軽くなった」

- 「痛みだけでなく、気分まで明るくなった」

- 「よく眠れるようになった」

- 「何年も悩んでいた症状が改善した」

◆ まとめ ―「痛みを治す治療」の選択肢として

慢性的な痛みに悩む方の中には、「これ以上はどうしようもない」と感じている方も少なくありません。ですが、痛みには“神経系の暴走”という明確な仕組みがあり、それに対する適切な治療が存在するのです。

星状神経節ブロックは、交感神経が関与するあらゆる“難治性の痛み”に対して、根本から働きかけることができる貴重な治療選択肢です。

ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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